ある日、実家の親から連絡が来る。「あなたの楽器、まだ置いてあるけど、もう処分していい?」。そんな経験、あるいはこれから起こりそうな予感のある人は、けっこう多いのではないでしょうか。
学生時代に使っていたギターやキーボード、子どものころ習っていたピアノ。自分は実家を出て、楽器だけが昔の部屋に残っている。親にとっては場所を取る荷物でも、自分にとっては思い出の品。急にそう聞かれると、「えっ、どうしよう」と手が止まってしまいます。今回は、そんな場面でどう考えればいいかを整理してみます。
まず「すぐ決めなくていい」と伝える
親から処分の話が出ると、つい慌ててしまいますが、よほど急ぎでなければ、まずは「ちょっと考えさせて」と伝えておくのがいいと思います。
勢いで「もういらない、捨てて」と答えてしまうと、あとで後悔することがあります。逆に「絶対に残して」と言い張ると、親の負担はそのまま続きます。どちらも極端に決めず、いったん持ち帰って考える。その一言で、お互いに冷静に話せる余地が生まれます。
ただし、親が片づけを急いでいる事情(引っ越し、リフォーム、部屋を使いたいなど)がある場合は、その事情も尊重して、いつまでに決めるかの目安は伝えておきましょう。
「捨てる」の前に選択肢があることを思い出す
親が「処分」と言うとき、たいていは「捨てる」を想定しています。でも、楽器を手放す方法は、捨てるだけではありません。
状態が良ければ、買取業者に売る、フリマアプリで売る、誰かに譲る、といった選択肢があります。特に有名メーカーの楽器や、人気のあるモデルは、思っていたより値段がつくこともあります。「捨てるくらいなら、売れるか聞いてみよう」と考えるだけで、結果が変わることがあります。捨ててしまえばゼロですが、売れれば多少のお金になり、誰かの役にも立ちます。
実家にあるからこその難しさ
この問題が少しやっかいなのは、楽器が「自分の手元にない」ことです。
実物が遠くにあると、状態を確認したり、写真を撮ったり、査定に出したりするのが難しくなります。だからこそ、親の力を少し借りる必要があります。「写真を撮って送ってもらえる?」とお願いしたり、出張買取や宅配買取に対応している業者を探して、実家に来てもらう・実家から送ってもらう形を相談したり。
最近は、家まで来てくれる出張買取や、箱に詰めて送るだけの宅配買取も多いので、自分が実家に帰らなくても手放せる方法はあります。親に少し協力してもらえば、遠方でも対応できることは意外と多いのです。
親の負担と、自分の気持ちのバランス
この話の本質は、「親の負担」と「自分の思い入れ」のバランスをどう取るか、という点にあります。
親は親で、子どもの荷物を勝手に捨てるのは気が引けるから、わざわざ聞いてくれているわけです。その気遣いに対して、できれば早めに、はっきりした返事をしてあげたいところです。自分にとって本当に大切な楽器なら、「自分で引き取る」「自分で手放し方を決める」と伝えて、行動に移す。それほどでもないなら、手放す方向で話を進める。
どちらにしても、「親に判断を丸投げしない」ことが、いちばんの思いやりかもしれません。自分の楽器の行き先は、自分で決める。そう考えると、答えは少し見えてくるはずです。
思い出は、楽器がなくなっても残る
最後に。手放すのをためらう一番の理由は、たいてい「思い出」です。あの楽器には、練習した時間や、夢中になった日々が詰まっている。それを手放すのは、過去を捨てるようで寂しい。その気持ちは、とても自然なものです。
でも、思い出は楽器そのものがなくなっても消えません。手放す前に写真を一枚撮っておけば、姿は記録に残せます。そして、自分が弾かなくなった楽器も、手放せば次に弾きたい誰かのもとへ渡っていきます。実家の片隅で眠り続けるより、また音を鳴らしてもらえるほうが、楽器にとっても幸せなことかもしれません。
親からの「処分していい?」は、面倒な連絡のようでいて、その楽器ともう一度向き合うきっかけでもあります。せっかくの機会に、一度しっかり考えてみてはいかがでしょうか。