楽器を手放したあと、その楽器がどこへ行くのか、考えたことはあるでしょうか。査定に出して、引き取られて、それで終わり。多くの場合、そのあとのことは見えません。でも、手放した楽器にはちゃんと続きの物語があります。今回は、少し想像をふくらませて、手放したあとの楽器の行き先をたどってみたいと思います。手放すかどうか迷っている人にとっては、背中を押してくれる話かもしれません。
買取された楽器は、また誰かのもとへ
買取業者に引き取られた楽器は、捨てられるわけではありません。多くの場合、整備やクリーニングをされて、中古楽器として再び売り場に並びます。
あなたが手放したギターが、これから音楽を始めたい誰かの「最初の一本」になるかもしれません。子どものころに使っていたピアノが、別の家庭の子どもの練習を支えるかもしれません。状態が良ければ良いほど、次の持ち主に気持ちよく使ってもらえます。手放すというのは、楽器の役目を終わらせることではなく、次の持ち主にバトンを渡すことなのだと考えると、少し見え方が変わってきます。
少し傷んだ楽器にも、行き先がある
「もう古いし、傷んでいるから」と価値を諦めてしまう人もいますが、状態が良くない楽器にも、意外と行き先はあります。
修理して再生できるものは、専門の手で直されて再び使えるようになります。部品として活用されることもあります。たとえば、壊れたギターのパーツが、別のギターの修理に使われる、といった具合です。木材や金属が再利用されることもあります。完全に使えなくなった楽器でも、素材として次に生かされる道があるのです。だからこそ、自分で「これはゴミだ」と決めてしまう前に、一度誰かに見てもらう価値があります。
海を越えていく楽器もある
あまり知られていませんが、日本で手放された楽器の中には、海外へ渡っていくものもあります。
日本の中古楽器は、状態が良く、丁寧に扱われているものが多いため、海外でも人気があります。国内では需要が落ち着いたモデルでも、別の国では喜んで使われることがあります。あなたが押し入れにしまい込んでいた楽器が、思いがけず遠い国で、誰かの音楽を支えている。そんな想像をすると、手放すことが少し前向きに感じられるかもしれません。
「眠らせておく」ことと比べてみる
ここで、手放さずに家に置き続けた場合を想像してみてください。
弾かれることのない楽器は、押し入れやクローゼットの中で、少しずつ古くなっていきます。湿気で傷んだり、ホコリをかぶったり。音を鳴らされることのないまま、ただ時間が過ぎていく。それは、楽器にとって少し寂しい状態かもしれません。
楽器は、本来は鳴らされるために作られたものです。誰かに弾かれて、音を響かせてこそ、その役目を果たせます。手元で眠らせ続けるよりも、次の持ち主のもとで現役として活躍するほうが、楽器にとっては幸せなのではないか。そう考えると、手放すという選択にも、温かい意味があるように思えてきます。
手放すことは、新しい物語の始まり
楽器を手放すのは、別れであると同時に、その楽器にとっての新しい始まりでもあります。
あなたとの時間を終えた楽器は、次の誰かとの時間を始めます。そこで新しい音楽が生まれ、新しい思い出が積み重なっていく。あなたが大切に使ってきた楽器なら、なおさら、次の持ち主にも大切にされる可能性が高いはずです。
手放すことをためらっているなら、その楽器のこれからを想像してみてください。押し入れで静かに古くなっていく未来と、誰かのもとでまた音を奏でる未来。どちらがその楽器らしいか。そう考えたとき、手放すという選択が、少しだけ優しいものに見えてくるかもしれません。あなたの楽器の続きの物語は、手放したその先から始まります。